〜心夜景〜恋愛小説の園 

コメントは、どうぞお気軽にしてやってくださいませ。あと、リンク募集中です。(なんか都心夜景と間違えて検索されてる気が・・・)

LADY4章

六本木のバーに、仕事の付き合いで行った。テレビに映っている顔なので、他人の視線がよくこちらに向けられる。スノースタイルのグラスを、じっと睨んでいると相手に気を使われた。だからと言って、これと言って何も出来なかったのだ。酔っている時は頭の動きが鈍いから。暫くすると、救急車がすぐ近くを通り過ぎた。もしかしたら自分を迎えに来てくれたのかもしれないと思ったが、酔ってるんだな、とつぶやいてやり過ごした。すると、案の定相手がまた気を使い出した。正直なところ、恐らくこの人は真面目なのだ。真面目だから、相手の事を気遣っているのだ。真面目さという名前の免罪符を手に入れているつもりの人間、つまり、つまらない人間。中途半端で、それでいて以外に人間臭さが感じられない。
 バーを出た後相手と別れて、始発に乗るため駅に向かう。始発なら人が少ないので楽なのだ。そしてホームで電車を待っていると、いきなり誰かに抱きつかれた。それも、後ろからいきなりだから、声も出なかった。猛烈に酒臭かったので、パッと頭に浮かんだのは中年の男のイメージだったが、実際は三十路辺りの女性だった。知らない顔をしようかと思ったが、放って置くわけにもいかないので、電車のシートにそっと横にして、隣で自分も眠った。
 この人は自分と同い年くらいだろうか、等と思いつつそっと髪をなでてみると、ゆっくり、むずがゆそうに目が開いた。お互いが充血した目をまっすぐ見てしまったので、二人揃って、自分もこういう人間なんだなと思いを馳せた。 こういう人間にはならないだろう、と、二十歳の頃は思っていた。しかし、歳を取ることは誰だってフライングしない。みんな均等に歳を取っていく。早く死ぬか遅く死ぬかの違いが死亡年齢曲線に美しい華を添えるわけで、よく考えてみれば、今ここで自分が死んだとすると、その曲線を綺麗にする事が出来るのだ。それも公共に対する貢献と言えなくも無いだろう。
 そんな感慨に耽っていると、いつもの駅に着いた。隣では、ぐったりしている女が再び眠っている。
  
 

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

LADY | コメント:0 | トラックバック:0 |
| HOME |