〜心夜景〜恋愛小説の園 

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クリスマスのすごし方(お勧めスポット)

 クリスマスですね、皆さんは如何お過ごしでしょうか?今年はなんと日曜日と重なってますね。
 知り合いにクリスマスを過ごす場所についてちょっとお節介してしまったんですが、やはりクリスマスは人気(←ひとけ)のある場所で過ごすタイプの方と、そうでないタイプの方がいらっしゃるようです。
 
 人気のある場所がお好みの方、首都圏にお住まいなら、新宿パークタワー等は如何でしょうか?あそこの最上階は夜景を見る場所としては日本でも最高クラスだと思います。東京タワーや都庁ビルなどは、行った事のある方はお判りかと思うのですが、観光向けの場所であり、クリスマスを過ごす場所とは言えません。上質の喫茶店になっていますから、何か飲みながら夜景に浸ることが出来ます。
 
 静かな場所が好い、という方はお家に居るのが好いかと思われがちですが、私としては、東京の月島の中央大橋辺りがお勧めです。あまり人もいないし、夜景が異様に綺麗です。少し寒いですけどね。
 街中から見るビルは、そんなに距離も離れていないし、第一、暗闇を隔てないとそんなに綺麗なものに見えません。慣れているからです。
しかし、月島(中央大橋は確か佃という地名にある筈ですが)はその条件を見事に、しかも東京湾でクリアーしていますのでクリスマスを過ごすにはちょうどよいと言えます。(行かれるのなら、ホテルのキープをお忘れなく!)

ちなみに、関西エリアでは、やはり三宮が一番よいかと思います。あそこは、クリスマスになら無くても普段から夜景の綺麗な街として有名です。「百万ドルの夜景」と呼ばれているそうで、実際見てみると、山がすぐそこまで迫っていますので、光にメリハリがあり、総じて夜景がすばらしい、というわけです。三宮の夜景は、山から見るか、淡路島から見るとすばらしいですし、いっそのこと少し良い街中のホテルに泊まると先に書いた通りの理由で夜景が綺麗です。

では、楽しいクリスマスになりますように。  
   大久保

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8章

 8章

 ゆっくり、時間が経っている。夕方になり、朱色の空が広がり、光は音を立てて恵一に降り注ぐ。恵一のうなだれた背中がその光を受け影が彼の背中を押している。
恵一はいつもどおり病院へ向かっている。いつもどおり病院へ向かい、いつも通りキスをして家に帰る。いつも、帰り際になって甘えだす。キスをねだる。細くなって、どうして生きているのかよくわからない腕を必死に差し出し、恵一の腕に絡ませる。

日常、という風に取れるがどれほども続くわけでもない。あせりから、恵一の優しさの形がもやもやとその輪郭を崩しつつあり、孝子の眼孔に恵一の感覚が流れ込んでくる。鋭い感覚は、やはり病人のそれである。恵一のせめてもの見栄なんて所詮は他愛無いものなのだ。

 世の中、たかだかワイン一本をありがたがるような連中が溢れかえっている。いっぱいに増殖した砂粒のような人々も、そのうち死ぬ。ほうっておけばみんな死ぬ運命にある。恵一が斉藤に呼び出されたときに言われたことには、斉藤の人生観が詰まっている気がした。
「お久しぶりです」
 恵一は斉藤の顔をいぶかしげに見つめ、「なぜ呼び出されたのか判りません」といったことを尋ねた。
「今回、あなたの特番の企画でうちの会社が係わったのよ」
「ああ、そうだったんですか」
 そうは言ったが、恵一の顔色は見る間に青くなっていき、
いつの間にか、小さい、小さい、
嗚咽が
じわり、じわり、
漏れ出す。
 恵一の人格はビジネスに向いていないらしく、ドライになりきれないのだ。こんな恵一に起こった出来事は、恵一が永い一週間を乗り切るだけの豊かさを与えなかっただけに、ショッキングだった。恵一の仕事は、実力は無いが、一時の時流により大スターになった若者に取って代わられたのだ。その実に粗末な人気により、恵一の惨めな計画がふいになったということになる。
 
「子供は?大丈夫なの?」
「いや」
「お願い、私も知っておきたい」
「実は...」
 恵一は今までの経緯を話した。斉藤の考えを聞いてみたかった。
「それで、貴方、どうするの?子供は、帝王切開の後どうするわけ?」
「出来れば、あいつが生きている間だけでも...」
「私はあの子の代弁なんて出来ないけど、あの子はそういうことをすぐ見抜くわよ?第一、そんなお金ないでしょう?」
「...」
「泣いてるような、情けない顔をあの子に見せないでほしいの」
「わかってるつもりです」
「ごめんなさい、こんなことに首を突っ込むのは失礼ってわかってるんだけど...」
 ついに恵一は声を上げて泣き出した。情けない自分の姿を否定したくてたまらない。ついこの間まで自信にあふれていた自分の姿が生き生きと浮かび、そしてその一見自信にあふれたこの人間が、あざ笑うような目つきで恵一を見つめる。
「お願い、その資金を私に出させて」
「いくらなんでも、そんな!」
「判ってます!でも、今そんなこと言ってる暇ないでしょう!あなたのプライドを採るか、あの子の人生を守り通すか、選びなさい!」
「...はい」
 生暖かい時間が過ぎた。汗ばんだ目を我慢し、二人は銀行へ向かう。


 後ほんのすこし、帝王切開のオペが始まるまでに二人の間にある、見えそうで見えない極薄い膜を取り去る作業にとりかかる。

8章おわり、9章に続きます

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7章

7章

 恵一が仕事場に選んだ場所は、渋谷にあるスタジオで、集客がかなり見込める場所である。恵一はこの場所で自分の実力を発揮しつくし、その後を孝子にささげるつもりなのだ。
 冬の特別企画と題した収録で、大物芸能人や多くの観客の前で輝きを放ち、そして消え失せる。
 ろうそくの最後の輝きなのだ。

「最近あまり来てくれないのね」
 孝子の顔には、「悲しい」とか「寂しい」と書いてあった。
「うん、もう少しだけ待ってほしいんだ」
「例の特番でしょう?どうなの、視聴率取れそう?」
「まあね」
 孝子の表情がさっと変わる。
「その後、どうしようと思うわけなの?」
 引退する、と言いかけたがやめた。孝子に心配をかけることになる。しかし、恵一の頭に活動休止という言葉は無かった。なぜなら、活動休止ということは孝子の死が去った後再び活動を始めるということであり、自分で孝子の死を「いずれ来る物」として認めることに他ならないからである。
「その時はその時の風が吹くさ」
 なんともいえず、ぎこちない言葉である。

 二人の唯一一緒に行ったことの無い街は、桜木町である。孝子にとって世界一どうでもいい場所だからである。
 その他の場所にも、そんなに多く訪れたわけではないが、誕生日やクリスマスにはそれなりのところに行った。

 恵一の仕事はもうすぐ終わる。
「あのね、ほんのちょっとでいいから、桜木町につれてって欲しいの」
「そんな体力ないでしょ?」
「ううん、大丈夫だから」
「それなら、先生と相談してくるよ」
「うん...」

 二人は特別に許可をもらい、桜木町の遊園地に来ている。ライトアップされたビルの下でゆっくりと晩御飯を食べ、夕日を見送った。
 孝子は彩られた観覧車がゆっくりと回るのを見るのが嫌であることにふと気づいた。ゆっくり、ゆっくり、時間が過ぎてゆくのを確実に実感するからで、それは末期の病人にしか湧かない感覚なのだろう。

「子供、なんだけど」
「うん」
「私は産むべきなの?」
「...」
「今、はっきり言えるのは、確実に自力じゃ産めない」
「そうだね」

 今彼女を生かしているのは、明らかに恵一の事と子供のことなのだ。しかし恵一は言えないでいた。今、孝子を支えている命綱、二人の宝は、実は生まれてもそう長くは生きられる見込みが無い、ということを。先程、病院で恵一が医師に言われた事は、こう。

「お子さんを詳しく検査したところ、病巣が近いせいでうまく栄養を送ることが出来なかったようで、器官の成長に障害があるようです。このままではそう長く生きることは無いでしょう。」
「は...、はい」
「いいですか、今一番大変なのは奥さんですよ、だんなさんがしっかり支えてあげてください。いいですね?」
「あの、子供は、もし生まれたとして、どれくらい生きるんでしょうか」
「一週間位が平均です」
 冷たい一言。

「このピクルスおいしい。ほら、これ」
 ほんの一口かじり、恵一の口に運んだ。
「子供のことはね、大体のことはこっちで処理するから」
「どういうこと?」
「病気だけに専念してなさいって事」
「はーい」

 恵一は、愛する者が居なくなることと、子供を亡くすことを同時に体験することになるだろう。その準備など出来るはずも無く、木の葉のごとく翻弄されるしかないのだ。しかし、どんな手段を使っても孝子が生きている間子供を生かし続けると、恵一は心の中で誓った。それには、金が要る。そして、恵一の大仕事は、成功する予定である。

 永い永い一週間になる、そういう予感がしていた。
 恵一は孝子に子供を産ませるという英断をしたのだ。

 大仕事の本番まであと数日。恵一の携帯に斉藤から電話があった。

7章終わり、8章に続きます

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